sukikatteni’s blog

好き勝手つぶやいてます。

漫画『皇国の守護者』の絶版で思うこと

 


皇国の守護者という作品をご存知でしょうか。

佐藤大輔先生によって書かれた仮想戦記小説で、長らく平和だった島国<皇国>の北領に海の彼方の超大国<帝国>が侵略してきたことから始まる<皇国>と<帝国>の戦いと、それに伴う<皇国>の内部権力闘争を描いたものです。

イメージ的には日露戦争龍やサーベルタイガー(剣牙虎)が出てくるファンタジー色があるどっしりした戦記物。

この小説はコミカライズされており、伊藤悠先生の作画でウルトラジャンプにて2004年~2007年の間連載されていました。

詳しいことはウィキペディア読んでね。

 

で。

 
伊藤先生のツイッターにて漫画版皇国の守護者の絶版のお知らせがされました。

 

 


目の前が真っ暗になったよ…。

オタクならば誰しもが通るであろう、「推しのキャラが天に召される」「作品が打ちきりになる」…とかオタク的に辛い道が色々あると思うんですけど、個人的に今回の知らせが今までのオタク人生の中で一番ショックでした。

福山雅治ロスとかの人の気持ちってこんなんだったのかな…本気で会社休もうとしました(行きました)


いやだってはまってかれこれ13年になろうとしていた矢先で、私のこと知ってる人ならわかると思うんですけど毎年「今年こそ皇国の守護者アニメ化してくれ!!」って新年の挨拶と共に言って、本気でアニメ化を信じて生きてきたんですよ…

絶版て。

佐藤先生が去年おなくなりになられた関係とか作品の権利とか多分色々あるんだろうな、とは頭でわかってるし、もしかしたらどこかでまた別の形で販売されるのかもしれないけど。

でも、それじゃあやっぱり駄目なんだよ~……

だって、伊藤先生の手を離れちゃったって、関係ないって。

私自身、社会人になって結構な年数経つので大人の事情と言う名の色々な問題が複雑にあるんだろうなっていうのは頭ではわかるんですよ。

でも気持ちはやっぱり追い付かないよ!!


皇国の守護者と言う作品は、原作小説版、漫画版それぞれに魅力的な部分があって、私はどっちも好きで
(読んだことない人は読んでください面白いから)
特に漫画版には私にとっての「皇国の守護者」の入り口で、更には私のオタク年表においてめちゃくちゃ大きな位置を占めてるんですよ……。
そんな素敵な漫画を描いてくださっていた伊藤先生の手を離れるって、絶版って、なんかもう待ってくれよまだ気持ち追い付いてない。


追い付かないので私のなかの皇国の守護者(主に漫画版)という作品について以下ひたすらしゃべります。


わたしと皇国の守護者の出会いは2005年の4月初旬、大阪の片隅の本屋で平積みにされていた漫画版 皇国の守護者1巻を見たところから始まります。

1巻の表紙は主人公新城直衛と彼の愛剣牙虎の千早が並び勇ましく雪の中を駆けていくもの。(画像は手持ちの単行本)

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「この虎にのって戦うのかな?」


表紙買いでした。
だって絵がめっちゃうまい。
まずそれだけで買う価値あるでしょうが!


(因みに物語内で剣牙虎に乗って戦うということはありません。
 剣牙虎はその身だけで勇ましく可愛く活躍します。漫画版はコマのすみにいる剣牙虎までそれはもうかわいく、かっこよく、猫好きの人は必見です。彼らの一挙一動、その仕草の描写の細かさにメロメロになると思うので是非読んでください。是非堪能してください。モ・エー!ってなります。)

というわけで1巻を読み進めました。
ファンタジーものということもあり世界観の説明や状況を1コマ・1ページで分かりやすく説明してくれます。
なんたって絵が上手いからもうそれだけで説得力がすごい。

野党狩りからはじまり<皇国>は平和だな~。でも<帝国>が攻めてくるって噂もあるぜ~。
そんな馬鹿なわっはっはとか笑ってたらガチで突然<帝国>が北領に攻めてきよった!!!
しかも予想外に強い!やばい!逃げるしかねえ!

…というわけで主人公 新城直衛 属する第二中隊は敗走する皇国兵の最後尾となって帝国兵を足止めし、皇国兵の「転進(実質退却)」を支援することになったのだが、果たして無事任務を達成し皇国に帰還することはできるのか…?

…というのが漫画版 皇国の守護者の大まかなあらすじ。


そんな漫画版 皇国の守護者をある意味象徴するようなキャラクターがいます。
主人公である新城の特志幼年学校からの後輩、西田少尉です。

未読の方には盛大なネタバレとなりますが、この西田少尉、開始2話で相棒の剣牙虎の隕鉄と共に戦場に散ります。
(この西田少尉、ハニーフェイスのさわやかイケメンです。イケメン好きの方は是非読んでください。多分世が世ならananの表紙かざってたし、アニメ化されたらもう本編登場しないのに特集ページに毎回いると思う)

長年の付き合いのある後輩が味方中隊を逃がすためにたった28名で帝国軍の足止めとして死地に赴くことを容認しなくてはならない厳しい戦況だとか、西田と隕鉄の最後まで共に力の限り戦う姿とか、その牙が帝国の美姫ユーリアまであと一歩で届く…!とか、なんかもうしょっぱな2話からクライマックスなんですが、なんとこれ漫画版オリジナル展開です。

原作小説の西田の登場は黒豆茶を新城に渡す時と「西田少尉が戦死しました」の報告の時なんですよ。
(この関係で小説だと西田は1日長生き)

つまり西田は原作小説では結構モブ!!というかモブ!
漫画は冒頭からいるし新城のこと「先輩」とかいってわりと存在感強いのに!


で、何がいいたいかというと。

ここが原作小説と漫画版の大きな違いなんですよ。ストーリー改変とかそういう意味ではなく。
西田の改編はかなり大きい(連載冒頭のつかみの側面もあるのでかなり思い切った改変だけど、それが本当にいい方向で活きてます)ですが、そういうエピソードによる登場人物の肉付けにはじまり、皇国兵・帝国兵・龍や剣牙虎…コマの隅々に至るまで、伊藤先生が描かれるキャラクター達はただ原作小説のセリフや行動をなぞるものではなく、彼らの人となりや互いの関係を想像させるのです。

漫画版 皇国の守護者は「すべてのキャラクターが生きている」のです。

 

原作小説の魅力は、重厚で硬派なストーリー、戦場・政界さまざまな戦いの場で繰り広げられる頭脳戦と人間模様、<皇国>と<帝国>の戦争がなぜ起こるのか?なぜそれぞれの利害が発生するのか?という「戦いが起こる背景や仕組み」が丁寧に作りこまれ、そこで動き回る魅力的な登場人物やヒロイン達(剣牙虎から両性具有、和風洋風美女のバリエーションも豊富!)…とすでにてんこもりなんですが、それらのてんこもりな設定や魅力がが淡々とわかりやすく語られておりとても読みやすいのです。

 

では漫画版はなにが違うのか?
漫画版は西田の改変以外は基本的に原作小説と同じ出来事と時系列で物語が進んで行きます。

漫画版と原作小説の違いがわかりやすく見えるのが、西田の他に名前の出る、漆原・兵藤・妹尾という3人の少尉です。
西田と同様、この3人、下の名前が出てきません。 ない。 名字と階級だけ。
原作小説においてそれで話はしっかり動くし、彼らは物語の中でそれぞれ必要な役目を果たします。
特に漆原は「北領戦」においてはわりと象徴的な存在で、戦場における許容と慈悲のなさに傷つき学び戦いの中で軍人として成長をしていきます。
とはいっても「皇国の守護者」という物語の中では割とモブな存在です。
そして兵藤・妹尾は西田くらいの登場頻度でやっぱり名のあるモブ…という感じ。

先に述べたように、西田少尉は原作小説中ではわりとモブなんですが、漫画版ではとても印象深い活躍をするのと同時に、何気ないセリフや仕草や表情からキャラクターとしての厚みが原作小説より感じられます。

漫画版の3人の少尉たちは上記の西田のような改変はないですが、西田同様、原作小説の登場人物の枠組みを超えて、キャラクターとして生きているのです。
何気ない1コマの表情や仕草、原作小説にはない数コマのささやかなセリフのやりとり。でもそれらはけして物語の進行の邪魔はしません。
むしろ、そのやりとりの中にささやかにちりばめられた彼らの性格や人間関係、人物背景を見た読者がより物語へのめりこむような大きな魅力となっています。
あくまでも原作のエピソードに忠実、しかし厚みを増したキャラクター達が戦場で生きています。

冒頭で猫好きの皆様にアピールした剣牙虎の仕草や動きだって、ただ本当に小さくコマの隅にいるだけなのに、おなかを見せたり爪とぎをしたり、様々な仕草をしているのです。
毛並みやしっぽの形だってきちんと描き分けられている。
下手すれば読み流してしまうようなそんな細部に至るまで描かれている。

剣牙虎や三少尉に限らず、<帝国>側のキャラクターやただ刺されて倒れこむモブ、村人や皇国の人々、原作小説では「状況」や「舞台装置」として描写されていたものたちが、漫画版では伊藤先生の手によって「生きて」いるんですよ。

伊藤先生の確かな画力と、キャラクターに対する肉付けによって、漫画版 皇国の守護者は原作小説とは違った大きな魅力を持って輝いています。

わたしは、そんな漫画版 皇国の守護者が本当に大好きです。


もちろん原作小説だって大好きです。
(今回の主題からそれてしまうので多くは語らないだけで本当に好きです)
漫画1巻を買ってしばらくして原作小説を買い、先が気になってあっというまに漫画の収録エピソードは読み終わって止まれなくなって、夜中になってもやめられない止まらないで、かの「総員大隊長殿を救え!」のところであまりの某キャラクターの成長ぶりとか熱い展開にうおおおおおおおってなって、興奮しすぎて自分の身を守るために(無意識で)勢いの余り小説を壁に投げつけてしまった小説は後にも先にも皇国の守護者だけだと思います。
(すぐにごめんなさいー!って叫んで拾った後部屋をぐるぐる歩き回って落ち着いてから続きを読みました。)

漫画にはなっていませんが、夏季抗戦以降のエピソードも登場するキャラクター達の主人公新城に対する愛憎嫉羨望妬怒り様々な思いによって狂い変わっていく様も多いにエモいというか胸熱だし…それをふまえて動いていく世情や政治…
とにかく、小説は先に述べた魅力も含め、先の展開や背景の奥深さが大いに魅力的なのですが、今回は漫画版皇国の守護者のお話しなので割愛します。

 

で。

今回の 漫画版 皇国の守護者の絶版の何がそんなにショックだったって。

これだけ「皇国の守護者」という作品を漫画として魅力的に描いていた伊藤先生の手をなんで離れてしまうんだ。なんで絶版なんだ。

アニメ化だってしてほしい。伊藤先生の絵でしてほしい。
こんなに面白くて魅力的な物語が、絶版となってしまうことで、読んだことない人が読む機会がなくなってしまう。

最初に言ってる通り、大人の事情があるっていうのは十分わかってるんですよ。頭では。
でも気持ちは別なんだよ~~~!!!!
どうしようもない気持ちを持て余してるから仕事の昼休みもアフターファイブも使って思いのたけをここで叫んでんだよ~~~~~~~~~!!!!!!!!

漫画版の連載終了時だっていろんな憶測が流れたし、今回だってどういうことが動いてるのかなんていち読者の私には何にもわからないけど。
でも、やっぱり、大好きな作品を描いた人にきちんと還元されてほしいし、わがままを言うなら、その作品を描いたことで描いた人・携わった人たちがその作品のこと大好きですよ!って言ってくれるような環境やものであってほしい。
原作小説ありきっていうのはわかるし、もちろん佐藤先生側にもきちんと還元されていてほしい。
(今回の絶版の関係で原作小説側はどうなってるのか不明なんだけどいい方向にいってほしいと思ってます。)

権利は個人だけではどうにもならないのはわかってるけど、漫画としてこれだけ魅力にあふれた物語がどうして絶版なんだ。
どうして描いた人の手の届かないところにいってしまうんだ。

なんかも~うちながら泣いている。

個人的に漫画やアニメって生き物なんですよ。
その時代に連載・放送されていたからこそ意味があったり、連載していくうちに思ってもない方向にいいったり。

皇国の守護者ウルトラジャンプで連載してたので毎月UJ発売日はわくわくしながら本屋いったし、小説で先の展開はしってても、「今月はどこまでいくんだろう」「伊藤先生はあのシーンをどういう風に描くんだろう」「あのキャラクターはどんなビジュアルで出てくるんだろう」ってどきどきワクワクしながら読んで、読み終わったらエチャやメッセで皇国の守護者で知りあった人と語りあったり。
オリジナルのセリフや場面が出てきた時にはそれだけでうおおんってなってた。
読んでる時、伊藤先生がキャラクターに対して愛情もって描かれてるんだなって思えるだけでめーっちゃくちゃ幸せだった。ウルジャン全部は無理だけど皇国の守護者の分は切り抜いてまだ持ってる。
(個人的な皇国の守護者に対する思いの丈は本当気持ち悪いくらいにあるんですけど、今回の趣旨とは違うのでこのへんで止めときます。きいてやるぜ!って人はぜひご連絡ください。)

連載は終わっても、単行本は発売してるし、伊藤先生がシュトヘルを描かれたり(全14集でこちらも強く優しくも残酷で温かくたまらないです)、鉄血のオルフェンズでキャラデザしてアニメ放送されて(かの有名なガンダム作品のひとつでこれも強くまっすぐに生きる人たちのお話しでとてもいいです)るのを毎回それぞれ楽しみながら、このへんきっかけに「皇国の守護者」に興味持つ人がまた増えると嬉しいな~!って思えたし、なんかまあとにかく生きてたんですよ。

「絶版」という言葉は、そういう作品の生命が絶たれるに等しいくらいの絶望を感じる言葉だったんですよ。

 
そしてそれが決まるのは、その漫画を描いていた伊藤先生ではなく別のところで決まって、次にもし出会えたとしても、それはもう描いた人には関係がないって。
また出会えるならそれはすごくうれしいけど、でも、それを描いてくれた人とはもう関係ないって、なんか、本当いち読者のいちおたくのくっそわがままなのわかってるんだけど、めっちゃ寂しいんだって…。

 

叶うならば重版してほしいし、その分は伊藤先生にちゃんと還元されてほしいし
アニメ化もしてほしいし、表紙カバーの画集だってほしい。
原画展だってしてほしい。

漫画版 皇国の守護者の表紙、前後がつながって一枚の絵なんだけど、めっっっっちゃくちゃいいから!!!!!

個人的には3巻5巻がめちゃくちゃエモい!!!!!!!!!!!!

 

なんかもうとにかく私は漫画版 皇国の守護者が本当に好きなんだよ!!!!!

サイトつくってひたすら語ったり(基本的に友達がいないのでネットで叫ぶ)Bot作ったり、ツイッターの鍵アカウントでひたすらしゃべったり。

 

私はおたくなので漫画やアニメが好きなんですけど、自分が何が好きかというのが人にばれるのが恥ずかしいし、好きなものに対してのひいき目がめっちゃすごいのも自覚しているので、いつもネットの片隅でこそこそ語ってたんだけど。
なんか、今日くらいここで盛大に思いの丈を吐き出したかった。

 

絶版とかやめてくれ。
とてもじゃないけど、まだ全然受け止められんわ。
なんとかする方法があったら教えてください…。

 

そして、もし、ここまで読んでる人がいたらありがとうございます。

まとまってなくて申し訳ない。気持ちをまとめるために書いたので仕方ないと思ってやってください。
あと思ったより西田に関してしゃべってて我ながらわらうしかない。
(こんだけしゃべっててあれなんですが一番思い入れがやばいのは別キャラです…もちろん西田もすごい好きなんですが。
佐藤先生的にはなんでやねんって感じっぽいんだろうなあというのは某コラムで読んでてわかってはいるんですが好きだからしゃあない…)

皇国の守護者は漫画も、原作小説もとても面白いし、両方読むことでさらに楽しむことができます。
上記で語った通り漫画版はキャラクター達の魅力がおおいに光っています。それ以外にもいっぱいあるんですよぜひ読んで確かめてください。
本当に素敵な作品です。
各巻のあとがき漫画もめちゃかわいいし面白いし、モ・エー!に溢れています。

もうどうやってこのはてぶろを締めたらいいかわからない。
だって絶版って現実がいまだに信じられないというか受け入れられないんだもん…。
とりあえず風呂で泣いてシャワー浴びたら明日も仕事頑張ります…。

嘘って言ってくれよ…。嘘じゃなくても大好きなことには変わりないんだけどさ…。
本当に大好きな作品です。